『今日の芸術』(岡本太郎・著)を読んで、、、
- 2011年6月8日(水)
- カテゴリー|徒然コラム
宗教や高野山とは直接は関係ないのですが、持明院つながりのネタということで、、、。
先日私は、東京国立博物館の『ブッダ展』を見てきたのですが、会場である「東京国立博物館」では、普段から日本の美術品を展示しています。
『ブッダ展』は特別企画なので期間限定ですが、通常の展示室は日本の美術の歴史がわかるように、古くは縄文時代の土器から、各時代の要となる絵画や漆器、武具などが展示されています。
ただ私は、正直“芸術の素晴らしさ”というものが昔からよくわからなくて、ピカソの絵なども「いったいどこがいいのだろう?」と常々思っておりました。
先日そんな話を、持明院で働いている人たちと昼食時に軽く雑談していたところ、スタッフの一人であるオカベさんから「だったらこんな本がありますよ」と貸していただきました。
正直私は、「岡本太郎」と言っても、
- 今年生誕100年(娘がそれでレポートを書かされていたのを見た)
- 大阪万博の「太陽の塔」の作者
- 『芸術は爆発だ』
- 『グラスの底に顔があってもいいじゃないか』
というくらいしか知らず、むしろ氏の言動を見る限り、どちらかと言えば「奇人・変人」の類で、芸術家特有の「ネジが一本切れた人」ではないか、とずっと思っておりました。
ですが、この本を読んで、私は目からウロコが落ちる思いをしました。
まず、ものすごく読みやすいです。非常に簡単でわかりやすい文章で書かれています。おそらく中学生くらいでも十分理解できると思います。
そして何より、内容が理路整然としており、“なぜなのか”ということが簡単明瞭に書かれております。並のビジネス書よりよほどしっかりしています。
しかも、私は芸術家と言えば、「感性だけが大事で理論や理屈は必要ない」と主張する人ばかりかと思っておりました。
ですが、とんでもない。
この本を読んでわかったことは、氏は基本となる理論や歴史、技法をすべてマスターし、さらに若い頃フランスで感性を磨き、有名な芸術家とも議論を交わした上で、ご自分で考え抜いて行き着いた結論として氏の言動がある、ということがはっきりしました。
そしてこの本でもっともよかったことは、私のかねてからの疑問であった「ピカソの絵がなぜ評価されるのか?」ということの答が載っておりました。
この答は、「岡本太郎がこう言ってた」と答えられるような性質のものではなく、そう言ってしまった時点で、「権威ある人がこう言っていたから」と思考停止になること自体が問題だ、と氏は強く主張されています。
私もうまくは伝えられませんが、とにかくこのような本が今から60年前に書かれていて、今読んでも十分現代に通じる内容で、熱い心を誰にでもわかりやすく伝えている、、、。こんな本があったとは、私は今までの人生をもったいなく感じさせられました。
“人生を清らかに生きるための教科書の一冊”と言い切ってもよいと思いますので、ぜひ皆様にもお勧めしたいと思い、記載させていただきました。