「夕やけ こやけ」-四国霊場十三番札所住職三代記-(山口桂子 著)
- 2010年6月14日(月)
- カテゴリー|徒然コラム
本書は、2009年2月に月刊誌「テーミス」の編集長である伊藤氏がご来社の折にいただいたものです。
その時は軽く一読し、今お遍路で賑わう四国の札所の一つ大日寺の紹介程度に受け取り、興味も薄くその侭にしておりました処、田尾秀寛氏の著書「よう、おまいり」を読む機会があったので、本書も再度読み直してみました。
「夕やけこやけ」は、四国霊場十三番・大日寺の三代にわたる住職とその家族が織りなす人間模様を、孫娘に生まれた山口桂子さんの目から綴られた心あたたまるエッセイです。
温かい人柄が偲ばれるユーモアー溢れる文体に引き込まれ、面白おかしく一気に読了しました。
久々にエッセイの傑作に出会った思いをしております。
著者桂子さんは昭和9年生まれの76才で、昭和と平成を懸命に生き抜いた同じ時を小生も生き、共感共鳴することが多く、同志に近いものを感じました。特に戦時下は滋賀の寺に疎開していた当時の情景が鮮明に脳裏に浮かんでまいりました。
辛く苦しい時代の世相や、ともすれば暗くなりがちになる人間模様を、感傷におぼれることなく明るくサラリと描かれております。
また、母繁子さん(98才)は当時では珍しく徳島県立女学校出の才女で、その言動は今は亡き小生の母清子(大阪府立夕陽ヶ丘高等女学校出身)の面影が彷彿と浮かんでまいります。
私の母も農村(滋賀)の疎開以降終戦を通じ、慣れぬ畠仕事のお陰もあって随分丈夫になりました。
「夕やけこやけ」は大日寺に秘められた生活を、その孫娘が激動する昭和と平成の時代を懸命に生き抜いたありのままを描いた傑作です。
特に<はすの会>の皆さまには興味深く読んでいただける<本>だと推賞いたします。
ストレス社会で疲れきっている人々にエネルギーを補給する一冊になる、と確信いたします。
(上善)
本書はこちら(テーミス社のホームページ)からお求めいただけます。